Basic Design Note

紙コップが教えてくれた、日常にある「デザイン」

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今回は技法とかのお話とは違いますが、デザインをする上で、ちょっと「覚えておきたい事」についてのお話です。

■きっかけは「紙コップ」

普段手にすることのある紙コップ。使った後は大抵、ゴミ箱に捨てることになるのですが、これをじっくりと観察したことってありますか?

今回の主役は「紙コップ」

上の写真はどこにでも売ってる普通の「紙コップ」です。じっくりと観察してみても、特に重要な要素が隠されているわけでも無さそうですが・・・。でも、注意深く見てみると、ここからいろいろな事が見えてきます。

※もし、お手元に紙コップがあれば、記事を読みながら実物を見てください。写真よりも具体的ですよ。

■漠然と見るのではなく、注意深く観察してみる。

まず、観察をする前に、紙コップの「主な役割り」と必要な「機能」を考えてみましょう。

主な役割りと機能

実際はこれ以外の使い方をしたりもしますが、主な役割りと必要な機能はこんな感じですね。

当然「コップ」なので、飲み物を中に注げないといけませんし、口元に持って行くために、持ち上げる必要があります。最後は「中身を飲む」ので、飲める様な形にしておかないといけませんね。

こういった「役割り」を理解したうえで、観察してみましょう。

紙コップの中は空洞だけど、底がちゃんとあるので、中に飲み物を注ぐ事は可能です。また、横から持って持ち上げる事ができる形をしてますし、飲み口も広いので、口をつけて中身を飲む事もできます。

この時点で、役割りと機能は果たせていると考えられますね。

でも、もっと細かい部分に注目するために、より詳しく「形状」を観察してみます。

紙コップの上側(飲み口)の部分から見ていくと、他の部分と少し形が違う事に気づきませんか。縁の部分が丸められていて、側面と比べると「硬い」ですね。側面はすこし「斜め」になっていますし、底面は「上げ底」になっています。

詳しく調べてみたら、ただの紙コップなのに、いろいろと見えてきましたね。それと同時に、「どうしてこういう形になっているんだろう?」という疑問も出てきました・・・。

■疑問について考えると、「デザインの理由」が見えてくる。

紙コップの形状を詳しく見て、わかった事をまとめてみます。

紙コップを調べてみてわかった事

こういった形状を採用した理由を、「もしも、こんな形をしていなかったら?」という仮説を立てて考えてみます。

[1.]飲み口の部分が丸められてて、硬い。について。

もし、飲み口が「丸められてなくて、柔らかい状態だったら?」と考えてみます。

飲み口には「飲む人の口」がつきますね。そこから中身を飲むのですから、柔らかい状態だとフニャフニャで、形が定まらないから「飲みにくい」「こぼれる」という事が考えられます。

また、丸めていない状態だと、口当たりも悪いし、場合によっては縁で「口元を切ってしまう」かも知れません。

[2.]側面は少し「斜め」になってる。について。

側面が斜めになっている理由は、コップが「円柱」ではなくて、「円錐(えんすい)」の形をとっているからです。

「もし、円柱の形だったら」、今の形状よりも「持ちやすく」なるかもしれないけれど、持ち上げる時に(側面に)力がかかりすぎて、「中身があふれる」かも知れません。

また、円錐状の形なので、コップの上と下の大きさが違うので、持っている時に手から滑り落ちにくい利点も考えられます。

[3.]底面は「上げ底」になっていた。について。

「もし、コップの底面が平(たいら)だったら?」、底や周りに水滴がついて濡れた時、底がひっついて持ち上げにくくなり、「こぼしたり」「中身が漏れる」ことが考えられますね。

こうやって見ていくと、普通の「紙コップ」にも、役割りを果たす為のいろいろな「工夫」や、使いやすくするための「アイデア」が含まれていて、今の形が採用された理由がわかりますね。

■日常にある「デザイン」に気づく為の、「2つの視点」

この「紙コップ」の話は、僕が専門学校に通っている時にしてもらった話が基になっています。もう10年以上も前の話しになりますが、未だに覚えているのは、余程印象深かったからだと思います。

この話がきっかけになって、その後は身の回りの物を、割りと注意深く観察するようになりました。そのおかげで、いろいろな「工夫」や「アイデア」に気づく事が出来るようにもなりました。

そんな時に僕自身が、身の回りの「工夫」や「アイデア」に気づく為に、大切にしていることを挙げてみます。

[1.]「なぜ?」と疑問を持つ事。

この「なぜ?」と、疑問を抱いた事がきっかけで、今回の様に紙コップの細部の情報(細かな形状とか、使われるシーンで考えられることとか)を知ることができたんですね。

ある対象への「理解を深める」為には、詳しく調べる事が重要です。そういう時に、疑問を持つ事は「知ろう」とする大切なきっかけになりますね。

[2.]「もしも」と考える事。

先ほどの「仮説を立てて考えてみた」部分の事ですね。そこでは、違う形(逆の形)をしていた時の事を考えました。当然、通常の使い方に「適さない形」を考えているので、不具合(あふれる、潰れる、使いにくい。)が考えられました。

この「もしも」を考える時に大切な事は、想定している事の逆を考えるのでは無くて、「どういう状態でも、作ったものが「目的」を果たせるか?」を検証する事なんです。

デザイン(設計)をする際、利用されるシーンや、使用する人を想定しますが、それでも想定外の事は起こります。

また、自分自身が選んだ事が「本当に正しい選択」だったかを客観的に振り返る時にも、「もしも」という視点はとても役に立ちますし、これがきっかけで、「新しいアイデア」が生まれてくる事もあったりします。

■今回のまとめ

今回は「紙コップ」を取り上げていますが、普段の生活の中にある、あらゆる「製品」からこういった、デザインの「工夫」や「アイデア」を見ることができます。

鉛筆、時計、携帯電話、パソコン・・・。探し出せばキリがないくらいにたくさんありますよね。

ただ、こういう部分に目が行きにくいのは、これらの製品が「日常に馴染んでいる」ので気づきにくい、あまり深く考えない事が多いからでは無いかと感じます。

これらに気づく為に大切な事は、「その理由を考える習慣を身につける事」でもあるんですね。

こういった、製品として世に出ている、いわゆる「完成品」から学ぶ事は、とてもたくさんあります。また、完成に至るまでの経緯を知ることで、「答えの導き出し方」のヒントが見えてくるかも知れません。

また、そこで自分が得た知識は、調べた事を「誰かに(的確に)伝える時」に、とても役に立ってくれます。

自分が「理解」をすることで、伝えるために必要な情報の選択と、正しい(適切な)表現、不要な情報の排除を行う「基準」が生まれて、より良い「情報発信の方法」を身につけられる様になってきます。

デザイン技法を学ぶ事も大切ですが、こういった日常にある「デザイン」に気づくことも大切な事だと思います。

WordCamp Osaka 2012
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